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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2016年12月18日「クライスラーのいたずら」

20世紀の偉大なヴァイオリニストの一人と謳われたフリッツ・クライスラー。
並外れた才能から12歳でパリ音楽院を卒業。
13歳にしてアメリカ演奏旅行で成功し、その名を世界に知らしめました。
彼の名演奏はレコードに残され、作曲した『愛の喜び』『美しきロスマリン』などの作品は現代でも愛され続け演奏されています。
また人柄もきさくで、子どものように悪戯好きなところも周囲の人々に愛されていました。

ベルギーに演奏旅行したときのこと。
街の骨董屋を覗いていたクライスラーは、ふと思いついて携えていた愛用の「ガルネリ」というヴァイオリンを店主に見せ、「これを売りたい」と持ちかけます。
冗談のつもりで、店主の目利きぶりを確かめたかったのです。

店主はガルネリをじいっと見ると「ちょっとお待ちを」と言って店の奥に引っ込みました。
暫くして戻って来た店主は警官を連れており、クライスラーを指差してこう言ったのです。
「おまわりさん、この男です。クライスラーのヴァイオリンを盗んで私に売りつけようとしているのです」

慌てたのはクライスラー本人。
警官に連行されようとする彼はとっさにヴァイオリンを手に取り、『美しきロスマリン』をその場で演奏。
これを聞いた店主は「この曲をこれほど完璧に弾ける人はクライスラーさんしかいない」と恥じ入ったそうです。
めでたしめでたし。