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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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2016年5月1日「1号機関車」

明治5年、日本で最初の鉄道が開業し、新橋・横浜間を蒸気機関車が走りました。 第1号の機関車はイギリスから輸入されたもので、走る姿は浮世絵にも描かれています。
40年近く活躍したのですが、性能が高い機関車に取って代わられ、明治44年に廃車処分になりました。

これに目を付けたのが、九州で島原鉄道を創業した植木元太郎。
彼はお払い箱となったこの機関車を客車ごと安く払い下げてもらい、島原鉄道の1号機関車にしたのです。
九州で安住の地を得た機関車は、島原の人たちに愛されながら走り続けました。

ところが昭和になるとこの機関車の歴史的な価値が見直され、当時の鉄道省は"買い戻して博物館に陳列したい"と島原鉄道に迫ります。
植木は開業時から長く会社を支えて苦楽を共にした1号機関車を手放す気持ちにはなれませんが、鉄道省に逆らうわけにはいきません。
昭和5年、鉄道省に返還された機関車のタンクには「別れを惜しむこと感無量。涙をもって送る。島鉄社長・植木元太郎」と書かれたプレートが貼付けられていました。

国の重要文化財に指定された1号機関車は現在、埼玉県の鉄道博物館に保存展示。その色と外観は新橋・横浜間を初めて走ったときを復元していますが、タンクには植木の惜別のプレートがそのまま貼付けられています。