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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/22「ノリオくんのサクラ」

長野県塩尻市にはカタオカザクラという珍しいサクラが咲きます。
発見されたのは昭和20年。
小学校教師の久保田秀夫さんが山林の中で、発芽したばかりの若木なのにもう花をつけているサクラを発見し、「これは不思議だ」と自宅に持ち帰って鉢植えにしました。

その頃、久保田さんには待望の長男が誕生。
久保田さんが鉢植えのサクラを観察記録するそばで、よちよち歩きをするようになった長男はクレヨンでそのサクラの絵を描くのが日課となりました。
親子そろってサクラ観察の日々。
でもそれは長くは続きませんでした。
6歳になった長男は思いがけず病気で亡くなったのです。

その数年後、久保田さんはサクラの観察記録を植物分類学者の大井次三郎博士に報告します。それを見た大井博士は「これは新品種に間違いない」と、学会での発表を約束してくれました。

新しい植物が発見されて付けられる名前には2種類あります。
日本語の和名とラテン語で書かれる学名。
久保田さんが発見したサクラの和名は、発見場所の地名から「カタオカザクラ」と命名されたのですが、ラテン語で書かれた学名には「Norio」と読む単語が入っています。その意味は「ノリオくんのサクラ」。

大好きなサクラに名前が付く前に亡くなった長男・詔夫くんへの久保田さんの想いを、大井博士が汲んでくれたものなのです。