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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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10/6「立ち見席」

交響曲『新世界より』で知られるドヴォルザーク。
ボヘミヤの伝統音楽を受け継いだ雄大で親しみやすい旋律が親しまれています。
ドヴォルザークその人も素朴で温厚な人柄で、母国チェコの国民から敬愛されていました。
ですが、ドヴォルザーク自身は、自分が有名人としてもてはやされることが苦手だったのです。

彼がチェコのブルノという町で自作の交響曲を指揮したときのこと。
昼間のリハーサルを終えて、夜の開演までの間に町の理髪店で散髪していました。
すると、その彼の隣にたまたま座った客が、この日のコンサートについて熱弁をふるいます。
「あの有名なドヴォルザークのコンサートですぞ。これは見逃すわけにはいきません。あなたもそう思うでしょ?」
その客は隣の紳士にも、ぜひとも急いでコンサートの切符を手に入れるように勧めたのです。
「早く手に入れないと、夕方になったら もう立ち見の席しか残っていませんよ」

理髪店の主人がその客に 「じつはこちらの方こそ・・・」
と言いかけるのを手で制した紳士、つまりドヴォルザーク本人は、ため息をつきながらこう答えたものです。

「おっしゃる通り。ドヴォルザークが指揮をするコンサートでは、私は決まって最後まで立っていなくちゃならないのです」。