11/4「物理学者と数学者の友情」
昔、スイス・チューリッヒの工業大学にアルベルトという学生がいました。
彼は大学の講義などそっちのけで、自分の興味ある分野の本を読みあさる自己流の勉強。教師には反抗的で、いわゆる問題児の学生だったのです。
こうした学生は普通だったら落第するところですが、同じクラスの級友マルセルという学生が、自分が書いた講義ノートをアルベルトに惜しみなく貸し与えました。
マルセルは、大学の問題児アルベルトがきっと将来、独創的な学者になることを見抜いて、そんな彼を応援したいと思っていたのです。
そのお陰でアルベルトは無事、卒業。そのまま大学に残って物理学の研究に打ち込むつもりでしたが、なにしろ教授たちから疎まれていた学生だったので、その道は閉ざされてしまいました。
職探しに明け暮れるアルベルトですが、なかなか仕事にありつけません。
この窮地を救ったのは、またしても級友のマルセル。彼は父親のつてを使って、スイスの特許局にアルベルトを紹介。この安定した職場で、アルベルトは好きな物理学の研究に没頭することができ、また、職場の特許申請書類の中からさまざまな発明理論や数式を知る機会を得ます。
1905年。26歳のアルベルトは、親友マルセルの助言を得て、この職場から20世紀の物理学の基礎を築いた相対性理論を発表。アルベルト・アインシュタインが誕生したのです。
級友のマルセルとは、数学者マルセル・グロスマン。相対論の研究者たちは3年毎に開かれる国際会議を、彼の名を冠した「マルセル・グロスマン会議」と命名。生涯の親友としてアインシュタインを支えた彼の功績を讃えています。
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