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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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11/18「山の斜面の葡萄畑」

栃木県足利市の山あいに小さな葡萄畑が作られたのは、昭和33年のこと。38度という急勾配の山の斜面を2年がかりで開墾したのは、知的障害をもつ中学生たちと、その教師たちです。

机の前での勉強が苦手な少年たちが、鉛筆を鋤や鍬に持ち替えての農作業。土を掘り起こし、重い堆肥を担ぐ。カラス追いの空き缶を叩き続ける。炎天下で草刈りをし、秋にはたわわに実った葡萄の房を丁寧に摘み取る―自然を相手の果てることのない作業は、彼らに自らの情緒を安定させ、能力を引き出し、やる気と耐える心を自然に学ばせることになったのです。

やがてこの葡萄畑は、知的障害者が葡萄を栽培しながら暮らして自立をめざす更生施設へと発展していきます。
そして昭和55年。この葡萄畑にワイナリーが誕生しました。
大手メーカーがしのぎを削る中で、素人の集団がワインを作って、果たして売れるのか?と心配されましたが、4年後の秋に醸造した初めてのワイン1万2000本は、地元・足利の町の人たちの応援もあって完売しました。

また、このワイナリーのことを知ったカリフォルニアワインの醸造専門家が応援のため来日して技術指導。品質を高めていった結果、平成12年には九州・沖縄サミットの晩餐会に使われて、一躍有名になりました。

山の急斜面を開墾して半世紀。知的ハンディをもつ人たちが自然と向き合って葡萄を栽培し、ワインを醸造する「ココ・ファーム・ワイナリー」。今年で29回目となる「収穫祭」が、きょう11月18日に葡萄畑で開かれています。