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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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6/17「スパイの責任感 」

戦後日本の礎を築いた名宰相・吉田茂。
彼は癇癪持ちの頑固者でありながら、ユーモア精神に溢れ、公私ともにユニークな逸話を残しています。

昭和23年の暮れ。一人の青年が総理大臣・吉田茂を訪ねてきます。
彼は戦時中に吉田の家に書生として住み込み、献身的に吉田の身の回りの世話をしていました。
懐かしい顔を見て喜ぶ吉田。しかし青年は思いもかけない告白をします。

「申し訳ありません。戦時中の私は、陸軍から派遣されて先生の家でスパイをしていたのです」
衝撃の告白に茫然とする吉田。
戦前から戦争に反対していた吉田は、戦時中も密かに和平を進める運動をしていました。
その容疑で憲兵隊に逮捕されたことがありますが、それもこの青年がスパイとして吉田の行動を伝えていたためでした。
青年は、戦後になって世の中が変わったいま、恩ある吉田茂を騙してスパイ活動をしたことの罪に服そうと覚悟して、こうやって名乗り出たのです。

その告白を聞き終えた吉田は、「お互い、お国のためと思ってやったんだから、よいよ。当時は君が勝ったけど、いまは私が勝ったね」と言って大笑い。そして、夜のふけるのも忘れて旧交を温めました。

その後、吉田はこの青年の就職まで斡旋していますが、その推薦状に、吉田はこう書いたそうです。
「この男、責任感きわめて大なり」
吉田茂ならではの愛情溢れたユーモアです。