TOPページへアーカイブへ
提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
←(3/27「海を渡った日本の桜」)
(4/10「母子飛行」)→

4/3「モーゼスおばあちゃん」

60年ほど昔のアメリカに「モーゼスおばあちゃん」と呼ばれていた画家がいました。

本名アンナ・モーゼス。
貧しい農家で生まれ、12歳から住み込みで働き、27歳で結婚、バージニアで農園を借りて暮らします。
その間、10人の子どもを産み、農作業と育児に明け暮れながら歳を重ねていきました。
やがて66歳のときに夫が死去。
70歳になるとリウマチで手先が不自由になっていきました。
そこでリハビリと気晴らしを兼ね、彼女は75歳にして生まれて初めて油絵を描き始めたのです。

その絵は、農村の生活や行事、自然の移り変わりなど、
彼女の若かりし時代の身近な風景を描いたフォークアート。
高度なテクニックもなく、むしろ稚拙な筆捌きですが、
森の鮮やかな緑や雪景色の抜けるような白さ、生き生きと描かれた人々や動物の姿には、
素朴で暖かい叙情があふれています。

5年後。
そんな彼女の絵がニューヨークで脚光を浴び、やがて全米の注目を集め、
その作品世界そのままの人柄から「グランマ・モーゼス」つまり「モーゼスおばあちゃん」と呼び親しまれていきました。
売れっ子画家になっても素朴でつつましい農村暮らしを続け、
アトリエさえ持つこともなかったモーゼスおばあちゃん。
1961年に101歳で息を引き取るまで、彼女はおよそ1600点の作品を描きました。

亡くなる直前に描いた遺作のタイトルは「虹」。
そこには笑顔あふれる幸せいっぱいの人々の様子が描かれています。
年老いてから何かを始めてもけっして遅くはない??彼女の人生はそのことを、私たちに示してくれているのです。