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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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12/5「フェアプレイに金メダルを」

ロン・クラークは、1950年代から60年代にかけて活躍したオーストラリアの陸上長距離選手。
1970年に引退するまで世界記録を17も作った偉大なランナーですが、
オリンピックではいつも優勝候補の筆頭に挙げられながら、一度も勝つことがありませんでした。
そのわけは、あまりにもフェアプレイにこだわり過ぎたからです。

世界中からトップレベルの選手が集まるオリンピックでは実力が伯仲しているので勝負がつきにくく、
どのようなペース配分で走るか、相手のペースをどう崩すかなどといった戦略や選手どうしの駆け引きが求められます。
ところが、クラークは、スタミナを温存しておいて
ゴール前でさっと逆転するようなレース運びさえも潔しとしない、フェアプレイ一途の信念の人。
世界中のどんなレースでも、スタートからゴールまで堂々と全力を尽くして走るというスタイルを、頑なに守り続けたのです。

その結果、実力は下でもレース運びが巧みな選手に負けることもたびたび。
地元オーストラリアの新聞からは、
「クラークは走ることを楽しんでいるだけで、何がなんでも勝つ気がない」などと非難されました。
しかし、オリンピックで金メダルが取れないクラークと走った世界中の選手たちは、
駆け引きひとつしない彼の哲学を尊敬していました。

1968年。クラークがプラハに遠征したとき、オリンピック2大会で金メダル4個に輝くザトペックと知り合い、意気投合します。帰国する日、空港での別れで、ザトペックは「これを記念にあげよう」と、小さな箱をクラークのポケットに押し込みました。離陸した飛行機の中で、箱を取り出したクラークはびっくり。
そこにはザトペックがヘルシンキ大会の1万mで獲得した金メダルが入っていたのです。
そして、そこにはこのようなメッセージが記されていました。

「これは友情から差し上げるのではなく、君が金メダルに値する人間だからだ」。