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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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6/7「思い出をつなぐ傘」

梅雨の時期になると、なんとなく気分も沈みがちですが、今日は、そんなじめじめした気分も吹き飛ばす、元気な傘職人をご紹介します。

東京にある一軒の洋傘店。
オーナーの鎌田智子(かまたともこ)さんは79歳。
この道65年になる大ベテランです。
彼女は、戦後の焼け野原から立ち直った下町の傘職人に弟子入りし、以来ずっと傘職人の道を歩んでいます。

新しい傘をつくるだけではありません。
壊れた傘の修理も快く引き受けてくれます。
鎌田さんの元に届けられるのは、「父親の形見の傘」だったり、「お嫁に来るときに、母親が持たせてくれた傘」だったり。
壊れても一本の傘にこだわるお客さんがいるからこそ、鎌田さんはどんなに忙しくても、修理の手を休めることはありません。
中には、心棒が腐ってしまったものもありますが、そんなときでも、型番とメーカーを調べて部品を取り寄せ、一本一本丁寧に修理します。
「修理が難しい傘は、寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまうの。あの部品をあーして、こーして、って。直せたときは本当にうれしい」と鎌田さん。

そして、彼女のもう一つの傘づくりは、和服で日傘をつくることです。
8年前、彼女のお母様が作ってくれた着物をほどいて日傘をつくったことがきっかけで、「ぜひ、この着物で日傘をつくってください」と、全国から依頼がくるようになりました。
それは、単なるリサイクルではなく、世界に一本しかない芸術作品です。

修理して再び命を吹き込まれた傘も、古い着物から生まれた新しい傘も、鎌田さんが最も大切にしているのは、その傘に込められた思い出。
依頼人の手元に返ってきた傘は、開いた瞬間に、大切な思い出までもが一緒に蘇るのです・・・。