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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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6/22「日本初のプロカメラマン」

1862年、今から146年前の幕末文久2年、長崎市内に日本初の写真館がオープンしました。
その名は「上野撮影局」。
経営者・上野彦馬(うえのひこま)は、若い頃にオランダ語で西洋の学問:蘭学を学びますが、その教科書の中で、西洋で発明された写真というものに出会います。
そこで、教科書をもとにカメラの製造から現像などの薬品の製造まですべて自分で行いました。
つまり、上野が作ったカメラこそ、初の国産カメラだったのです。

上野が開いた写真館は、最初は「魂を吸い取られる」という迷信のために開店休業状態でしたが、徐々に繁盛していきました。
幕末から明治にかけて上野が撮影した中には、坂本龍馬、高杉晋作、伊藤博文、桂小五郎といった幕末の志士や、ロシア最後の皇帝・ニコライ二世など、近代史に名を残す人物の顔もあり、貴重な文化遺産となっています。

また、明治7年に、金星が太陽をかすめて通過する珍しい天文現象が日本で観測されましたが、上野はその記録撮影にも成功。つまり、日本初の天体観測撮影となったのです。

上野彦馬にはもうひとつ、日本で初めて行なったことがあります。
それは、日本初の戦場カメラマン。
明治10年、政府の要請で西南戦争に従軍して田原坂の戦いを記録撮影しているのです。
1万人あまりの戦死者を出したという西南戦争最大の激戦地・田原坂。
しかし、彼が撮影した207枚の写真の中に戦死した人の姿は1枚もありません。
その理由は解らないままですが、この事実は、「人と人が殺し合う戦争」というものに対する、彼自身の深い思いがあったのかもしれません。