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提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
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3/2 放送分 「然別湖の氷上温泉」

日ごとに春の陽気が強まる3月になりましたが、北海道・大雪山(だいせつざん)の中に広がる然別湖(しかりべつこ)は今も冬本番です。
朝の冷え込みは氷点下20度から30度。湖は完全に凍り付いたままですが、この氷の湖の上に、なんと、温泉があるのです。

脱衣所は、雪と氷で造った大きなカマクラです。氷の上に大きな浴槽を運び入れ、湖のほとりのホテルの源泉からパイプでお湯を引いた、冬限定・湖に浮かぶ露天風呂。これがなかなか風流だと人気を呼んでいますが、湯船は一つなので、時間帯によって男女の利用を区分けしています。

ある日、この温泉に男性数人の観光客が入っていたときのこと。脱衣所のほうから突然若い女性たちが顔をのぞかせ、声をかけました。
「あのう、いっしょに入ってもいいですか」
男性が入っている温泉に若い女性が混浴をしたいと申し出るなんて、普段ではありえないこと。驚いて訳を聞くと、彼女たちは大雪山の麓・旭川の女子大生で、この温泉に入るのを楽しみに日帰りで遊びにやってきたのです。しかし、女性利用の時間まで待っていると旭川に帰る最終バスに間に合わない。そこで男性利用時間と承知の上で、もし迷惑でなければ入浴させてほしいとのことでした。
乙女たちの無垢な訴えに、迷惑なことなどありません。
雪と氷の温泉に男女合わせて10数人ほどの混浴が始まりました。
初めは同じ湯船にいる見ず知らずの男性たちを意識して硬い表情をしていた女性たちも身体があたたまるにつれ、ほころぶような笑顔になっていきます。
やがて湯煙とともに笑い声が上がり、和気あいあい。男も女もなく、皆が童心に帰ったような清々しささえ感じるひとときだったのです。

なんともおおらかな温泉のふれあいを呼び起こした然別湖の氷が溶け始めるのは、5月中旬。そのときが春の始まりです。