TOPページへアーカイブへ
提供:創価学会
FM福岡(土)14:55-15:00
←(3/26放送分 「夢を楽しみ、夢が夢を呼ぶ倶楽部」)
(4/9放送分 「全国初の公立中高一貫校」)→

4/2放送分 「生き残った桜」

私たちの心に深く染み込んでいる桜への思い。
今年も桜前線が日本列島を北上しています。岐阜県・奥飛騨の山々に囲まれた湖のほとりに、樹齢450年になる2本の桜の巨木がたたずんでいます。じつはこの桜の木、かつては湖の底で毎年満開の花を咲かせていたのです。合掌造りの家が建ち並ぶ荘川(しょうかわ)村。そこには、240戸1200人の住民が先祖代々の土地を大切に守りながら穏やかに暮らしていました。そこに降って湧いたのが、水力発電のダム建設。昭和30年代の日本にとって、国家発展のために一山村の暮らしを犠牲にすることは、やむを得ないことでした。
もうじき水没する村。人々が最後に別れを告げたのは、村のお寺の境内に建つ大きな桜の木でした。
赤ちゃんが母親の背中越しに見上げた桜の木・・・。小学生たちの格好の遊び場・・・。若いカップルにはデートの場所・・・。そして家族や隣近所が憩いの場として集まった桜の木・・・。村の人たちにとってこの桜の木は、一生を通して暮らしの中に存在した心のよりどころだったのです。そんな村人たちの気持ちを知って心を揺り動かされたのは、ダム建設を行う側の人たちでした。合わせて70トンにもなる2本の桜の木が丁寧に掘り起こされ、ダム工事に使われる鉄骨を組んだ巨大なソリに載せられ、3台のブルドーザーで4日をかけて山の斜面まで引き上げられたのです。湖の底に沈んだ村を見下ろすように植えられた桜の巨木。 10年後の春には、満開の花を咲かせました。その知らせを伝え聞いた、かつての荘川村の人たちが、全国から集まってきました。湖底に沈んだ古里に、もう帰ることはできません。でも、荘川桜と名付けられたこの2本の桜。その木の下が、いまは彼らの古里そのものなのです。