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最先端材料科学研究:スピン分解計測を行わずにスピン分極特性のハイスループット最適化へ
国立研究開発法人物質・材料研究機構
2025年1月28日
Science and Technology of Advanced Materials
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202501273412-O1-zqZmYUEM】
図の説明:基板上の作られた組成傾斜Co75–xMnxSi25薄膜試料.組成xが試料にそって連続的に変化している。
伝導電子が大きくスピン分極した電子構造を有するハーフメタル材料は、次世代ハードディスクのリードヘッド用の電極材料や、スピントランジスタにおける半導体への高効率スピン注入材料など、スピントロニクスの重要材料として長年期待を集めてきました。しかし、ハーフメタル特性の評価を効率的に行う手法がないことが材料の最適化や新規材料開拓の課題となっていました。今回、NIMS、東北大学と光科学イノベーションセンターからなる研究チームは、2024年4月に稼働したばかりのNanoTerasuの高輝度放射光と傾斜組成試料作成技術を組み合わせることにより、わずか1日の実験でハーフメタル特性に最適な組成を同定することに成功しました。
スピントロニクス材料の研究では、多くの場合,上向きと下向きのスピン状態を区別した物性評価が必要とされます。このスピン分解の必要性が,多くの実験の困難(感度の低さ、実験時間の長さ、など)をもたらしていました。本研究の基本的なアイデアは、今回実験対象とするようなある種のハーフメタル材料ではフェルミ準位上の電子状態密度とスピン分極特性とに相関性があるため、前者の観察により最適化が可能であるのでは、という推測でした。前者であれば、組成傾斜薄膜で系統的な組成変化データを取得することにより、スピン分解計測をせずともスピン分極特性に関する情報が得られるのでは、と考えました。
このアイデアの原理実証実験として、本研究では、連続的に組成が変化するホイスラー合金試料(組成傾斜試料)を作成し、高輝度放射光をごく細いビームに絞って,試料上の位置を変えて硬X線光電子分光計測を行いました。得られた実験結果の組成依存性から、最も小さな電子状態密度を有する組成をわずか1日の計測で特定することができました。こうして特定された組成が最も高いスピン分極特性を持つことは、理論的な計算とデバイスの磁気抵抗効果の実験で確認され、本手法が高スピン分極材料の組成最適化や新規材料の開拓に有用であることを実証致しました。
本研究で導入された 組成傾斜試料×高輝度放射光 による大量データ取得は、スピントロニクス材料開発に大きく寄与するのみならず,種々の材料に対するデータ科学を通じた解析や開拓へと展開され得るものといえます。
論文情報
タイトル:High-throughput evaluation of half-metallicity of Co2MnSi Heusler alloys using composition-spread films and spin-integrated hard X-ray photoelectron spectroscopy
著者:Ryo Toyama*, Shunsuke Tsuda, Yuma Iwasaki, Thang Dinh Phan, Susumu Yamamoto, Hiroyuki Yamane, Koichiro Yaji & Yuya Sakuraba*
* Magnetic Functional Device Group, ResearchCenter for Magnetic and Spintronic Materials (CMSM), National Institute for Materials Science (NIMS), Tsukuba, Ibaraki 305-0047, Japan (E-mails: TOYAMA.Ryo[at]nims.go.jp, SAKURABA.Yuya[at]nims.go.jp)
引用:Science and Technology of Advanced Materials Vol. 26 (2025) 2439781
最終版公開日:2025年1月7日
本誌リンク https://doi.org/10.1080/14686996.2024.2439781(オープンアクセス)
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プレスリリースURL
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