ジャズ・ピアノ
このコーナーで最初に取り上げるのは、『ジャズ・ピアノ』。
それでは、ジャズ・ピアニストのアルバムの中で、この5枚から
始めてみては…というものを独断で選びました。
『ワルツ・フォー・デビー/ビル・エヴァンス・トリオ』
ビル・エヴァンスのピアノをひとことで言うと、陰影のあるピアノ。
ロマンティックだし、幻想的だと思わせるところもある。しばらく
聴いてると、彼の内面を覗いてるような気にさせられる。
そんなプレイが最も分かりやすく味わえるのが、ヴィレッジ・
バンガードでのライヴ盤である、この作品でしょう。
『鬼才トリスターノ/レニー・トリスターノ』
レニー・トリスターノのピアノの硬質な音色とフレーズには、
背筋が伸びる想いがする。その感じは、クールで知的な
人と接するときに似ている。その上、録音されたピアノの
ピッチを変えたり、自分のピアノを2重、3重と重ねて
録音したり、といった当時としては実験的なこともやって
のける人でもあった。ジャズ・ピアノをこれから聴こうという
人もこんなアーティストがいることを知っていて損はない
でしょう。これも時空を越えた音楽のひとつだと思う。
『ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1/バド・パウエル』
彼のこのアルバムほど、ピアノのタッチとフレーズ運びに、
情感と閃きがこもっている作品は稀だな、と思えるときが
ある。もちろんVol.2もいいが、1枚しか選べないので、
あえてVol.1を。何度も聴くと、リズミックな演奏の向こう
に悲哀も見え隠れするところがいい。
『ケリー・アット・ミッドナイト/ウィントン・ケリー』
ウィントン・ケリーは、サックスやトランペットをフロントに据えて、
そのバックで演奏しているときに本領を発揮するピアニストだと
思う。その意味では、『ケリー・グレイト』というアルバムがいい
のかもしれないが、彼のピアノの魅力を分かりやすく前に出て
いるという点で、このピアノ・トリオの作品を選んだ。バックで
弾こうが、前に出ようが、そのスウィング感は変わりなく素晴らしい。
今回の5枚の中で、最も体を横に揺らしてくれる作品かも。
『クラシック・アーリー・ソロ(1934-1937)/アート・テイタム』
多くのジャズ・ピアニストに大きな影響を与えてきたアート・テイタム
のプレイの中でも、とりわけ評価の高い初期のソロ・ピアノが聴ける
作品を選んだ。盲目同然の状態でも、そのプレイにはテクニックと
歌心の両方が備わっていて、ジャズだけでなく、クラシックの分野
でも評価されている。彼の高音から低音に転がるように下りてくる
フレーズを聴くと、ちょっと胸が高鳴る。’30年代の録音なので
音質は悪いが、それを超えて訴えかけてくるものがある作品。
以上です。ジャズの好きな方からは、「セロニアス・モンクや
ハービー・ハンコックやチック・コリア、キース・ジャレットは?」と
いった声も聞こえてきそうですが、彼らの持つ先鋭的な部分や
壮大さをいきなり体験する前に、上記の5枚あたりから聴くと、
初めての人にも拒否反応が少ないかな?という判断から、
このようなセレクションになりました。
ぜひ、聴いてみてください。
(選曲担当:稲葉)