4月6日のゲストはジャズピアニスト 大西順子さんでした。

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毎回、素敵なゲストをお迎えして、その音世界を紐解いていくプログラム「SOUND PUREDIO presents 音解(おととき)」 。お相手はちんです。

今回のゲストはジャズピアニスト大西順子さん。 #大西順子

世界を舞台にした数々の活躍とともに日本のジャズのトッププレイヤーとしてシーンを牽引し、一方で何度か表舞台から退きながらそのたびにさらに華々しく復活してきた大西さん。

スタジオに現れた大西さんは、勝手に抱いていたイメージ通りにサバサバしてよく笑い、様々な経験を経て今の充実した活動をとても楽しんでいることが伝わる本当に素敵な方でした。


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そんな大西さんがドライビングミュージックとしてチョイスしてくれたのは、デューク・エリントンの「UMMG」。大西順子さんが常々原点と公言する敬愛するアーティストです。

「私が学生時代、アメリカに渡って初めてデューク・エリントンとか真剣に聞くようになったんですけど、特にこの曲を聴いて完全にノックアウトされたんですね。今だにデューク・エリントンの曲としてはこれが一番好きなんです

そしてこの曲は実際に大西さんのドライビングミュージックでもありました。

「私、この年になってと言うか必要があってほんの4、5年前に車の免許をとったんです。
で、高速を走ってて車の中で、はじめデューク・エリントンのこの曲を大音量でかけたらそれはそれは気持ちよくって(笑)。すごい速いってわけでもないんですけど、この音圧というかどんどん盛り上がっていくさまが、スピードに合わせてホントに気持ちよくなってって最後はバンドが一体になってバァーっとなるあたりが鳥肌モノで、私が個人的に気持ちよかったのでみなさんもどうかなって思って(笑)」

とても楽しそうにお話してくれる大西さん。 
やっぱりデューク・エリントン好きなんだなあ。改めて確認できたようでちょっとうれしくもありましたね。


そんな大西さん、昨年末に新たに結成した3管セクステット(6人編成)によるオリジナルアルバム『JUNKO ONISHI presents THE SEXTET「XII (twelve)」』をリリースしました。

今作では、現在活躍めざましい本邦トップ・プレイヤー達が集い、全楽曲をそれぞれが書き下ろし。スイングからエレクトリック、コンテンポラリーまでこれまでにない「12」のまた新しい音楽が楽しめるアルバムです。

「まず普段活動を一緒にしてくれてますトリオの井上陽介と高橋信之介。そこに最近活躍が素晴らしい若手のトランペットの広瀬未来君そして同じく若手のテナーサックス/フルートの吉本章紘くん。さらに今日本でトロンボーンといえばこの方なんじゃないでしょうかね、私と同世代なんですけど片岡雄三さんとこの三人が入ってセクステットの形で演奏してます」

そして今回、バランスよく全員の作品が揃っているなど新たな魅力が詰まっています。

「なんと言っても全員、演奏が素晴らしいんですけど、曲も書ける、リーダーシップもちゃんと持っているという。そういうバンドですので、普通そういう人たちがあつまると喧嘩しそうなんですけどそうでもなく(笑)。 大変うまいことハーモニーバランスが取れた面々が揃いましたね。音楽的嗜好も全く一緒というわけではないんですけども、お互いをリスペクトできてそしてお互いを理解しようとして、そしてその能力が大変長けているという。そういうメンバーが本当に奇跡的に揃いましたので、全員に1曲以上このバンドのためだけに書いていただきました。

そうすると個性もバラバラなのでしっちゃかめっちゃかの一枚になるかなと思ったら、わりと一枚としてトータルにサウンドしているので(笑)」

すごく統一感のあるアルバムですよね。

「そうなんですよね。そこは作っていてうまいこと行ったなと、ちょっと不思議に思っています(笑)」

今回セクステットにした理由などはあるんですか。

「たまたま前の作品を作ったトリオで色々な活動をし始めまして。その中の仕事でちょっと大きなフェスティバルに出るという時に、トリオだけじゃ寂しいねということで3管ぐらい入れて華々しくやりたいなという時がありまして。その時に頼んだのがたまたまこのメンバーだったんですね。 その時はま、ありもののアート・ブレーキーの曲であるとか、チャールズ・ミンガスであるとか、そういうのをやったんですけど、やってみたら大変良かったんですよ。

それでみんな作曲能力もあるということもわかってましたし、これで一回とにかくスタジオに入って1枚なんか作ってみようかという話になりまして、それを作ったらまあ思ったより面白かったんですよね」

今回全曲オリジナルで、しかもバランスよく全員の曲が並んでいるのも意欲的だなと。

「それはですね。最近カバーという言葉が世の中に広がってまして、元々ジャズっていうのはカバーをすごく積極的にやるジャンルではあったんですね、スタンダードとかね。ちょっとそういう空気に私が個人的に飽きたというか(笑)。それで書いてもらいました」

なるほど。
今回、個人的には大西さんの極上のフェンダーローズ、エレクトリック・ピアノも聞きどころかと思ったんですが、ずいぶん久しぶりではないでしょうか。

「20世紀の終わり頃でしたからねえ(笑)」

今回のメンバーなればこそやってみようか、みたいなところもあるんですか?

「んー。私の中では常にそれが眼の前に置かれてあれば弾くんですけど。
でも、98年位に私がライブとかで使いだしたときは、まあ非難轟々だったんですよ。悪魔に魂を売ったぐらいなことを普通に言われてて。

なんですけれど。その後なんか割とすごく普通に弾くようになって。だったらまあ、あってもなくてもいいな。ぐらいの感じだったんですけど、今大体のスタジオにフェンダーなどはあるので今回はちょっと弾いてみたくらいのかんじですね。 あと作曲者の方が せっかくあるので弾いてくれといわれることもあったし」

 今回同時に発売されたアナログ盤では「XII Electric Side」と「XII Acoustic Side」の2枚に別れていたりもしたので、かなり狙ったのかなと思っていました。

「あれも奇跡的なもので(笑)。半分くらいがそういう形だったので、じゃあこれ2枚に分けられるんじゃないかみたいな」

あれれ。こちらが勝手に深読みしてみても、実際ってそういうものだったりするものですね。 失礼しました。とはいえ、そんな新しい試みが大西順子さんの今までのアルバムと比較してもとても新鮮で魅力に大きく寄与しているように思います。

そして、今回色々お話をお聞きする中で一番驚かされたのは、このアルバムに導入されて楽曲制作に活躍したツールが「LINE」だったということでしょうか。マジびっくり、です。

「今回、私達みんな遠くに住んでもいる人もいるし、日々忙しく働いてる人もいるので、そんな密に集まってリハしたりとかできないんですね。ですので全部 LINE とかグループトークだけで会議して

今回のアルバムでは全員で作曲した「みんなの曲」というナンバーもありますね。

「そう。まさにこの曲なんかはすべてLINEのグループの上だけで作った曲なんですが」

えええ!どういう工程で作るんでしょう?

データと、それを言葉で補足しながらやりとりして。 この曲に関してはまずはドラムの高橋信之介が短いドラムのパターンを叩いてそれを録音したのを載せたんですね。 その上にトランペットの広瀬君がその上に最初のメロディーを作って、それに井上陽介がベースラインを作ってそれを写メしたのが送られて(笑)

だからちょっと見てないと、未読が130幾つとかすごい数字がついてたりしてビックリしたりしてなかなか後追えなくなるんですけどね(笑)」

へええ。それで曲ってできちゃうんですねえ。

「そうなんですよ! ダメ元でやってみようくらいのかんじだったんですが、やってみたら意外とカッコいいことになったみたいな」

そう言って笑う大西さん、なんともカッコいいです。


そんなアルバムからさらに大西さんに一曲ピックアップして解説していただきました。

アルバムの中で大西さんが作曲した2曲のうちの1つ「Teenager」です。
ジャズのメインストリームど真ん中でアグレッシブなスタイルをイメージする大西さんからは、ちょっと意外な気もするスムースで聴き心地良いセンチメンタルなナンバーです。

「このプロジェクトやるにあたって、何を書こうかなというところで ちょっとみんなをビックリさせてやろうと思って」と笑う大西さん。

「私というとね、絶対ミンガス、モンク、デューク...ドロドロした、昔のジャズっぽいものをみんな想像するだろうなって。バンドメンバーも多分そういったものが出てくるんじゃないかと。ドロドロの4ビートじゃないかなと思ったと思うんですよ。でも私にもそうじゃない面があるっていう(笑)。ちょっとたまには主張してもいいかなという」

ずいぶんへそ曲がりな理由ですねえ。

「まあまあ、何十年もその路線で来たわけですから(笑)」

そんな音楽にぴったりだと思うんですが「ティーンエイジャー」というタイトルの由来は?

「これはですね。そもそも私がこの曲を書くときに、こういうの書きたいなとか思ったのがスティーリー・ダン。 スティーリー・ダンといえば「Aja」という名盤があってちょっとそこから

え。ティーン「エイジャ」ってことですか?

「(笑)最初は音出しの時にみんなそう言って笑ってたんですけど冗談で。でも意外とコレ良いタイトルだなって思いまして」

実際、曲もスティーリー・ダンやあの頃のジャズの影響濃いポップミュージックっぽいですよね。

「そうですね。私がスティーリー・ダンとか聴いてた頃がティーンエイジャーでしたし。

私の中ではこれ歌入ってないんですけど、ホーンセクションがいわゆるボーカルのメロディーとコーラスとをやってくれてるようなイメージで書いてもらったんですね。 すごく具体的に言えばドナルドフェイゲンが歌ってマイケル・マクドナルドみたいなコーラス入ってるみたいな囁くような感じで管の人たちにも吹いてもらっているので、そういうふうに聴いていただけると嬉しいんですけど。
スティーリー・ダンとか昔のスティービーワンダーとか、あの辺の作品では主旋律とバックコーラスがいつのまにか主旋律になっていくっていうのが、一時はやったんですね。ちょっと所々入れてみたんで、気がついてもらえたら嬉しいかなくらいのかんじですかね」

この曲もそうですが、今回大西さんが作曲したナンバーではフルートが印象的ですね。

「フルート自体、アルバムに入れたのは初めてだったんですけど、私音域も知らずに聴いて勉強させていただきました。フルートって結構破壊力あるんですよね(笑)。 使い方間違えるとすごい破壊力ということをちょっと思いました」


JUNKO ONISHI presents THE SEXTET『XII』発売記念ツアー in 九州         
2019年4月1日1(木) 福岡 Gate's 7

大西順子(pf) / 広瀬未来(tp/flh) / 吉本章紘(ts/fl) / 片岡雄三(tb) / 井上陽介(b) / 高橋信之介(ds)
時間:OPEN 18:30 / START 19:30


「このメンバーまるまるもちろん 来ますよね。 そして私はキーボードもピアノももちろん弾きます。そしてですね。このCDを作った時は1人1曲以上書くという約束だったんですけど新たなルールが設定されてまして、一人3曲以上持ち曲を作るということに。トランペットの広瀬くんはすでにクリアしてるんですよ。他の人達はまだなので」

今回のステージでは新曲も聴けるかも?

「可能性高いですねえ。そしてさっきの『みんなの曲』ですね。ああいう手法でなんか他にもかけるんじゃないかと全員で。あれは英題は『Unity 1』とあえてしたんですが、もしかしたら『Unity 2』とか『Unity 3』とかが出来上がってる可能性もありますね。 なのでCDプラスアルファのものが聞けるんじゃないかと」

大西さんもノルマがあと一曲ありますから、大西さんの新曲も聴けるかもしれませんね。

「そうですそうです(笑)」

気取ったところなんて一つもなく、自分の音楽をざっくばらんにそして楽しそうにお話してくれる大西さん。今回のグループでのまた新しい取り組みを心の底から楽しんでいることがよく伝わる今回の音解でした。

もしかすると、今もどこかでLINEで猛烈にやり取りしながら、また新しいナンバーができあがっているのかと想像すると、自然と笑いも浮かんできたりして、ライブでの披露が本当に楽しみになりますね。ちょっと期待しています。

ありがとうございました。

 

Jazz Pianist - Junko Onishi 大西順子 Official Web Site (外部リンク)

次週、4月13日は 長澤知之 さん をお迎えします。どうぞお楽しみに。